借金が返済できない場合でも、一定の条件を満たし時効期間が経過すれば時効が成立し、返済する義務が消滅します。
時効が成立するまでは延滞を続けている状態なので、延滞という情報が個人信用情報機関に登録されており、ブラック扱いになるのが一般的です。
時効の援用が成立すれば、延滞していた借金も完済扱いになるためブラック情報が削除されます。
時効の援用が信用情報に与える影響や、ブラック情報を削除するまでの流れを詳しく解説していきます。
上手く時効の援用を活用すれば信用情報を回復できるんだ
時効の援用を利用して信用情報を回復しよう
時効の援用を成立させるためには、最終返済日から5年または10年以上の月日が経過している必要があります。
他にも、時効が成立する期間に裁判を起こされていないことと、一部分でも返済していないことが条件です。
過去に延滞・滞納している場合でも、時効の援用を活用すれば借金の返済義務を消失させることが可能です。
しかし、時効の援用が成立しても事故情報がすぐに回復するわけではなく、事故情報が回復するまで5年かかります。
このような状態を前提に、時効の援用を利用する前の信用情報の状態を説明します。
時効の援用を利用する前の信用情報の状態
時効の援用が成立するということは、借金を長期間延滞しているということです。
基本的には61日以上もしくは3ヶ月以上の延滞をした場合、個人信用情報機関にブラック情報として登録されます。
そのため、時効の援用を利用する前の時点では、いわゆるブラック状態。
借金の時効が成立する場合でも時効の援用をしなければ、時効は成立しないのでずっとブラックのままということです。
しかし、全ての借金がブラック扱いになるのではなく、銀行や消費者金融といった金融機関の借り入れの場合に異動情報が登録されます。
そのため、個人間の借金といった信用情報機関に加盟していない相手との借金であれば、信用情報機関とは無関係であるためブラック扱いにはなりません。
ブラックなのでクレジットカードなどは作れない
ブラック扱いになってしまうと、「クレジットカードの契約」「カードローン」「キャッシング」「住宅ローン」「自動車ローン」といった、各種ローンや借り入れの審査に不利になるので契約できません。
このような状態を回復するためにも、時効の援用を行って適切な処理を行う必要があります。
ブラック状態だと審査に落ちやすくなるから注意が必要だよ
時効の援用を利用した後の信用情報の状態
時効の援用を利用すれば、個人信用情報機関に登録した内容を変更することができます。
実際に時効の援用を利用した後、信用情報はどのような状態になっているか見ていきましょう。
CICでは貸倒の扱いになる
指定信用情報機関であるCICの場合、時効の援用を利用した後は貸倒という扱いになります。
この貸倒は、借金は時効によって消滅し回収できなかったという意味です。
この貸倒状態は異動情報として登録されているので、状態はブラックのままであり時効の援用を利用する前と同じ状態のまま。
時効の援用を利用すればCICに登録されている情報が、すぐに変更になるわけではないので注意してください。
参考:指定信用情報機関CIC
削除されるまで5年かかる
CICに登録された貸倒の情報は、時効の援用が成立した後の5年間はそのままの状態であり、5年経過すると契約終了・完了となり借入残高が0円になります。
つまり、信用情報に登録されたブラック情報は削除されるまで5年かかるということです。
消費者金融から借り入れしていた場合は、時効期間と削除されるまでの期間を含めると10年間必要になるので注意してください。
JICCは成立した時点で削除される
日本信用情報機構であるJICCの場合は、CICと情報が変更になるタイミングが異なります。
JICCも時効の援用が適用される前はCICと同様に事故情報が登録されている状態です。
時効の援用が成立するとJICCの場合はCICと違い、債権者だったJICCに加盟している企業が、時効によって借金が消滅し、回収できなかった旨を報告した時点で事故情報が削除されます。
時効の援用を行えば、JICCの情報をもとに審査をしている金融機関であれば、審査に通過できる可能性も高いです。
参考:日本信用情報機構JICC
CICは時効が成立しても5年は情報が残るから要注意なんだ
信用情報を回復するための時効の流れ
時効の援用によって信用情報を回復することができますが、適切な手順通りの手続きが必要です。
信用情報を回復するために、どのような流れで対応すればよいのか見ていきましょう。
書類を作成する
時効の援用を行うためには債権者に、正式な書類を作成し送付する必要があります。
借金を消滅させるためには時効援用通知書を作成してください。
時効援用通知書は、時効の援用制度を利用する意思があることを相手に伝えるために使います。
時効が成立する期間が過ぎていたとしても、この時効援用通知書を送付して意思を伝えなければ、借金の時効は認められません。
内容証明を送る
書類の作成が完了したら、内容証明郵便を債権者に送ります。
このとき、配達された記録を残す必要があるので、配達証明付きで送付しなければなりません。
内容証明郵便には決まった様式があるため、確認しておきましょう。
時効が成立する
内容に問題なければ時効が成立しますが、場合によっては裁判を起こされる可能性もゼロではありません。
裁判などのトラブル対応や、確実に時効を成立させるためにも弁護士に時効の援用を依頼するのがおすすめ。
債権者側が借金を時効として処理すれば成立します。
成立後・5年後に信用情報から削除される
時効の援用を行い時効が成立すれば、JICCの個人信用情報のブラック情報は削除され、CICの場合は5年の時間が必要です。
時効の成立は、借金を返済した場合と同じ扱いになるので注意してください。
時効を成立させるためには、適切な手続きが必要なんだ
専門家に依頼して信用情報を効果的に回復する
借金の時効を成立させて信用情報を回復させるためには時効の援用が必要ですが、専門的な知識が求められるため専門家に依頼するのがおすすめです。
時効の援用を依頼できるのは弁護士・司法書士・行政書士です。それぞれどのような特徴があるか見ていきましょう。
弁護士に依頼する
最も一般的なのが弁護士に時効の援用を依頼することです。
弁護士に依頼すれば、「時効期間を経過しているか」「裁判を起こされていないか」「返済して債務があることを認めていないか」といった事実を調査・確認し、適切に手続きするので成功する可能性は高くなります。
他の方法と比較すると費用は見積りが必要であり、高くなる傾向があるので事前に相談し、確認してください。
自身の借金の金額と比較して依頼することが重要です。
また、万が一債権者から裁判を起こされるといったトラブルが発生しても、弁護士が間に立って対応するので安心して依頼できます。
実際に時効が成立して権利が消滅する借金の金額が大きいほど、トラブルに発展する可能性は高いです。
司法書士に依頼する
司法書士に時効の援用を依頼すると、弁護士と同様の業務を依頼できます。
しかし、借金の金額制限があり、140万円以下の借金しか対応できないので注意してください。
また、弁護士ではないのでトラブルになったときの対応もありません。
司法書士は弁護士よりも費用を安く抑えることができるため、140万円以下の借金の場合は司法書士を利用するのがおすすめです。
行政書士に依頼する
最も費用を抑えたい場合は、行政書士に時効の援用を依頼することもできます。
しかし、行政書士の業務の範囲は書類作成と送付のみ。時効の成立や裁判を起こされた事実の調査は行いません。
正式な書類を作成したいときだけ依頼するのがおすすめです。
まとめ
時効の援用を活用して借金の時効が成立すれば、信用情報上では借金を完済した状態と同じになります。
CICの場合、事故情報は完済してから5年は記録が残るので注意してください。
時効の援用を確実に行うためにはさまざまな調査を行う必要があります。
専門的な知識がない個人が1人で手続きをすると失敗しやすいため、弁護士や司法書士といった専門家に依頼して時効を成立させてください。
事故情報は5年消えないこともあるから要注意なんだ