親にお金を借りる頼み方と借用書の書き方・贈与税にならない返し方【2026年】

贈与税の基礎控除や特例の期限、印紙税額、公的貸付の条件は確認時点のものです。改正されることがあるため、手続きの際は国税庁や自治体の最新情報を確認してください。
転勤の引っ越しで初期費用が足りない、車を買い替えたい、資格の受講料をまとめて払いたい。数十万円が一度に必要になったとき、親にお金を借りるのは有力な選択肢です。それでも「親の老後資金を減らしたくない」「贈与税がかかると聞いた」「そもそもどう切り出せばいいのか」と迷って、なかなか言い出せない人は多いはずです。
結論から言うと、親からの借入は、返す前提で書面を作り、記録が残る形で返していけば税金の心配はほとんど要りません。心配の大半は「借りたのか、もらったのか」があいまいなまま数年たつことから生まれます。
この記事では、頼む前に決めておくこと、切り出し方と例文、借用書に書く項目と印紙、贈与とみなされる条件、利息と返し方の実務を順に整理します。読み終えたときに「親に頼む」「別の方法にする」を根拠を持って決められる状態を目指します。
先に結論
- 頼む前に「金額・使い道・毎月いくら返すか」の3つを紙に書く。これがあるだけで親の反応が変わります。
- 国税庁は、返済能力と返済状況から本当の貸し借りと認められれば借入金そのものは贈与にならないとしています。「ある時払いの催促なし」「出世払い」は贈与扱いです。
- 借用書は手書きでよく、金額・日付・返済期限・返済方法・利息・両者の署名を書きます。1万円以上なら収入印紙が必要で、40万円なら400円です。返済は振込で記録を残します。
- 贈与税は1年間にもらった財産の合計が110万円を超えたときにかかります。数十万円を無利息で借りても、利息相当額がこの枠を超えることはまずありません。
- 親を頼らない道には、社内貸付制度、給与の非常時払、社会福祉協議会の貸付があります。
親に頼む前に決めておく3つのこと
1. 必要な金額を「足りない分」まで絞る
引っ越しに40万円かかるなら、貯金で出せる分を先に引きます。貯金が20万円なら、頼むのは20万円です。「全部出して」と「足りない分だけ貸して」では、親が受ける印象がまったく違います。
家計簿アプリや通帳で直近3か月の収支を眺めると、ぼんやりしていた「足りない額」が数字になります。
2. 使い道を1行で言えるようにする
「引っ越しの敷金と礼金、家電で40万円。会社の転勤で来月までに払う必要がある」のように、何に・いくら・いつまでに、を1行にまとめます。使い道が前向きなら、親にとっては応援したくなる話です。使い道の整理に迷う場合は、お金を借りる理由(資金使途)の伝え方も参考になります。
3. 毎月いくら返せるかを先に決める
親に一番安心してもらえるのは、返済額と期間です。手取りから家賃・食費・通信費・保険料を引いて、無理なく残る金額の範囲で決めます。「ボーナスで一括」は、ボーナスが減ったときに約束が崩れるので、月々の返済を基本にします。
親の老後資金が心配なときの聞き方
親が年金生活に入っているなら、直接「老後資金は大丈夫?」と聞くより、「困るなら別の方法を探すから正直に言って」と断りやすい形で聞くのがコツです。渋る様子なら、金額を減らすか別の方法に切り替えます。

金額と返済の計画を先に紙に書いておくと、話しながら頭が真っ白になっても大丈夫。親にそのまま見せてもいいくらいだよ。
親にお金を借りる頼み方と例文
伝える手段は「会う」か「電話」
LINEやメールの一文だけで頼むのは避けます。文字だけでは事情も本気度も伝わりにくいためです。帰省の予定があれば会って、遠方なら電話で話します。「相談したいことがあるから、今度の日曜に時間をもらえる?」と予告しておくと、親も心の準備ができます。
伝える順番
- 何が起きているかを先に話す(転勤が決まった、車が故障した、資格試験の申込期限が来た)。
- 自分でここまで用意したことを伝える(貯金20万円は出す、不要品を売った、分割払いを検討した)。
- 足りない金額と、いつまでに必要かを具体的に言う。
- 毎月の返済額と完済の目安を伝える。振込で返すこと、借用書を作ることも添える。
- 「無理なら別の方法を考えるから、正直に言ってほしい」と断る余地を残す。
例文1: 引っ越しの初期費用
来月から転勤で、引っ越しの敷金や家電で40万円くらいかかる。貯金で20万円は出せるけど、あと20万円が足りない。月2万円ずつ10か月で必ず返すから貸してもらえないかな。振込で返して、借用書も作る。生活に響くなら遠慮なく言ってほしい。
例文2: 資格取得の受講料
仕事で必要な資格の講座に受講料が30万円かかる。会社から半分は補助が出るけど先に全額払う必要がある。補助が入るまでの半年間、15万円だけ貸してもらえないかな。補助が振り込まれたらすぐ返すし、それまでも月1万円ずつ返すつもり。
頼み方で避けたいこと
- 使い道をごまかすこと。後で分かったときに、金額以上に信頼を失います。
- 「いくらなら貸せる?」と親に金額を決めさせること。親が無理をして多めに出しがちです。
- 返済期限を決めないこと。親子でも「いつか返す」は、税務上も関係上も一番トラブルになりやすい形です。
親からお金を借りると贈与税がかかる?線引きを整理
国税庁の説明はシンプルです。タックスアンサーNo.4420では、借入金の返済能力や返済状況からみて本当に金銭の貸し借りと認められる場合、借入金そのものは贈与にならないとしています。
贈与とみなされるのは、形は貸し借りでも実質が贈与の場合で、国税庁は「ある時払いの催促なし」「出世払い」を例に挙げています。返す期限も額も決まっていない借入は、税務上は「もらった」と同じ扱いです。
| 見られるポイント | 貸し借りと認められやすい | 贈与とみなされやすい |
|---|---|---|
| 書面 | 借用書や金銭消費貸借契約書がある | 口約束だけ |
| 返済の条件 | 期限と毎月の額が決まっている | 「ある時払い」「出世払い」 |
| 返済の実態 | 振込で毎月返し、記録が残る | 返済が止まっている、記録がない |
| 返済能力 | 収入から見て現実的な期間で返せる | 収入では返しきれない金額や期間 |
贈与税がかかるのは年110万円を超えたとき
贈与税は暦年課税(1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計に課税する方式)が基本で、合計から基礎控除110万円を差し引いた残りに税率がかかります。つまり1年間にもらった財産が110万円以下なら、申告も納税も不要です。申告が必要な場合の期限は、もらった年の翌年2月1日から3月15日までです。
生活費や教育費は、そもそも贈与税の対象外
親子など扶養義務者の間で、生活費や教育費に充てるために受け取った財産のうち通常必要と認められるものには贈与税がかかりません。生活費は日常生活に必要な費用、教育費は学費や教材費などです。ただし、生活費の名目で受け取ったお金を預金したり、株式や不動産の購入に充てたりすると課税対象になります。
引っ越し費用や車の購入は「通常の生活費」とは言いにくいので、返す前提の借入として整理するのが確実です。
無利息だとどうなる?
国税庁は、無利子で借りた場合には利子相当額の利益を受けたものとして、その利益相当額が贈与として扱われる場合があるとしています。贈与扱いになるのは「利息相当額」であって、借入金そのものではありません。数十万円の借入で利息相当額が年110万円を超えることはなく、同じ年に他に大きな贈与を受けていなければ、無利息でも贈与税の申告が必要になる計算にはなりません。
借用書に書く項目と印紙
親子間でも借用書は作ります。税務上「貸し借り」であることを示す証拠になり、親子の間で約束をはっきりさせられるからです。民法でも消費貸借(お金を借りて同じ額を返す契約)は書面で行うことが原則と定められています。
書く項目
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 表題 | 借用書(または金銭消費貸借契約書) |
| 作成日 | 2026年10月1日 |
| 借入金額 | 金四拾万円也。改ざん防止のため漢数字(壱・弐・参・拾)で書く |
| 受け取った事実 | 「上記金額を確かに借り受けました」の一文 |
| 返済期限と方法 | 2028年5月末日まで。毎月末日に2万円ずつ、貸主の口座へ振込 |
| 利息 | 年1.0%。無利息にするなら「利息は付さない」と明記 |
| 遅れたときの取り決め | 遅延損害金の率、または「遅れる場合は事前に連絡し、翌月に上乗せして返す」など |
| 署名・押印 | 貸主・借主それぞれの住所、氏名を自筆で書き、押印 |
決まった書式はなく、便せんに手書きでも有効です。返済期限は収入から見て無理のない範囲で決めます。年収の何倍もの金額を「30年で返す」のような設定は、実態のない貸し借りと見られやすくなります。
収入印紙はいくら必要か
借用書や金銭消費貸借契約書は、印紙税法上の「消費貸借に関する契約書」(第1号文書)にあたります。記載金額が1万円以上なら収入印紙を貼り、印鑑や署名で消印します。
| 借用書に書いた金額 | 印紙税額 |
|---|---|
| 1万円未満 | 非課税 |
| 1万円以上10万円以下 | 200円 |
| 10万円超50万円以下 | 400円 |
| 50万円超100万円以下 | 1,000円 |
| 100万円超500万円以下 | 2,000円 |
| 金額の記載がないもの | 200円 |
収入印紙は郵便局やコンビニで買えます。文書を作った人が納める決まりで、2人で作った契約書なら連帯して納める義務があるため、借りる側が用意するのが自然です。貼り忘れても契約は無効になりませんが、本来の額の3倍の過怠税がかかることがあります。
借用書を作る手順
- 親と合意した金額、返済期限、毎月の返済額、利息の有無を決める。
- 上の表の項目を書いた借用書を用意する。
- 金額に応じた収入印紙を貼り、消印する。
- 貸主・借主が自筆で署名し、押印する。
- お金は親の口座から自分の口座へ振込にしてもらい、借用書の作成日と振込日をそろえる。
- 借用書は親が原本を持ち、自分はコピーか2通目を保管する。
利息の付け方と返し方の実務
利息は付けたほうがよいか
親子間の借入に利息を付ける法的な義務はありません。それでも利息を付ける人が多いのは、貸し借りの実態を示しやすく、親にも「ちゃんと返す」姿勢が伝わるからです。
利率の上限は利息制限法で決まっており、元本10万円未満は年20%、10万円以上100万円未満は年18%、100万円以上は年15%を超える部分は無効です。実務では年1%前後の低い利率にする例が多いです。
たとえば40万円を年1.0%で借りて月2万円ずつ20か月で返すと、利息の合計は約3,500円です。同じ条件を利息制限法の上限である年18.0%で計算すると約63,000円になります。親に利息を付けて返しても、金融機関で借りるより桁違いに軽いことが分かります。
| 借入額 | 毎月の返済額 | 返済期間 | 年1.0%の場合の利息合計 |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 2万円 | 10か月 | 約900円 |
| 40万円 | 2万円 | 20か月 | 約3,500円 |
| 60万円 | 3万円 | 20か月 | 約5,250円 |
返済は振込で、記録を残す
返済は手渡しではなく、親の口座への振込にします。通帳やネットバンキングの履歴がそのまま返済の証拠になり、毎月同じ日に同じ額を振り込む設定にしておけば記録が途切れません。この記録は税務上の証拠になるだけでなく、将来の相続できょうだいから「もらったのでは」と疑われずに済みます。返し終わったら、借用書に「完済」と日付を書いてもらって保管します。
返せない月が出たら
予定どおりに返せない月が出たら、返済日が来る前に親へ連絡し、「今月は1万円にして、来月から2万5,000円にする」のように代わりの案を出します。連絡がないまま止まるのが、親子間で一番関係を悪くするパターンです。条件を変えたら、日付と新しい条件を借用書にメモで追記します。

借用書と振込の記録さえあれば、税務署にも、きょうだいにも、ちゃんと説明できる。「借りた」を形に残すのが親への礼儀でもあるんだ。
住宅資金なら「借りる」より「もらう」特例もある
引っ越しや車ではなく住宅の購入資金なら、話は少し変わります。父母や祖父母から住宅取得等資金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たすと贈与税が非課税になる特例があります。2026年9月時点の制度では、2024年1月1日から2026年12月31日までの贈与が対象で、非課税限度額は省エネ等住宅が1,000万円、それ以外の住宅が500万円です。
主な要件は、贈与を受けた年の1月1日に18歳以上であること、その年の合計所得金額が2,000万円以下であること、贈与を受けた翌年3月15日までに住宅を取得して住むことなどです。適用を受けるには贈与税の申告が必要で、非課税の結果として税額が0円でも申告は省けません。
60歳以上の父母や祖父母からの贈与では、2,500万円まで贈与税を先送りする相続時精算課税を選ぶ方法もあります。数千万円単位の話になるので、住宅資金は税理士に相談しながら「借りる」と「もらう」を組み合わせて決めるのが現実的です。
親を頼らない、または親と組み合わせる選択肢
親の老後が心配なら、一部を別の手段でまかなって親に頼む額そのものを小さくする方法を先に当たります。
会社の制度: 社内貸付と給与の非常時払
勤務先に社内貸付制度(従業員向けの融資制度)があれば、低い利率で借りられることがあります。就業規則や福利厚生の案内を確認し、総務や人事に聞いてみます。制度の仕組みは社内貸付制度の規定や金利で詳しく説明しています。
また、労働基準法第25条は、出産、疾病、災害などの非常の場合に、支払日前でもすでに働いた分の賃金を支払うよう会社に義務づけています。引っ越しや車の買い替えは対象外ですが、緊急の医療費などでは覚えておくと役立ちます。
公的な貸付: 生活福祉資金貸付制度
収入が少なく他から借りるのが難しい世帯、障害のある人がいる世帯、65歳以上の人がいる世帯には、市区町村の社会福祉協議会が窓口の生活福祉資金貸付制度があります。連帯保証人がいれば無利子、いなくても年1.5%です。失業や収入減で生活費が足りない状況なら、親に頼む前に相談する価値があります。
支払いそのものを分ける・遅らせる
家電は分割払いにする、会社の転勤なら赴任手当や社宅の有無を確認する、といった方法で親に頼む額を減らせます。借りる額を減らすのが、一番確実に返済を楽にします。
少額のカードローンをどう考えるか
親に負担をかけたくない場合、金融機関のカードローンを使う人もいます。金利は利息制限法の上限で年15〜20%、貸金業者からの借入は総量規制(貸金業者からの借入残高が年収の3分の1を超えると新規に借りられない決まり)の対象です。使うなら金額を必要最小限にし、返済期間を短くし、返済計画を紙に書いてから申し込みます。
親戚や友人に頼む場合
身内や友人に頼む場合も考え方は同じです。詳しくは親戚からお金を借りる場合の考え方と友達にお金を借りるときの注意点で説明しています。
使ってはいけない借入先
- SNSや掲示板の「個人間融資」、登録番号を答えない業者、「10日で3割」のような高い利息を求める相手からは借りません。貸金業は財務局長か都道府県知事の登録が必要で、登録のない貸付はヤミ金融です。
- すでに関わってしまった場合は、金融庁の金融サービス利用者相談室、警察、消費生活センター、法テラスに相談します。
よくある質問
- 親からお金を借りるとき、110万円以下なら借用書はいらない?
- 税金の面では、1年間にもらった財産が110万円以下なら贈与税はかかりません。ただ借用書の目的は親子の約束をはっきりさせることにもあるので、金額にかかわらず返す前提なら作っておくのが確実です。
- 親からお金を借りるとき、利息なしでも贈与税はかからない?
- 国税庁は、無利子の借入では利息相当額が贈与として扱われる場合があるとしています。ただし贈与扱いになるのは利息相当額だけで、数十万円の借入で年110万円の基礎控除を超えることはありません。同じ年に他の贈与がなければ、申告が必要になる計算にはならないということです。
- 親にお金を借りるとき、LINEで頼んでもいい?
- 最初の予告や日程調整はLINEで問題ありません。ただ、金額や返済計画を伝える本題は、会うか電話で話すほうが伝わります。話した後に、決めた金額と返済条件をLINEで送っておくと記録にもなります。
- 親から借りたお金を返し終わる前に親が亡くなったら?
- 残っている借入は親の財産(貸付金)として相続の対象になります。借用書と返済記録があれば残高が明確になり、きょうだいとの話し合いもしやすくなります。記録がないと、贈与や特別受益(生前に受けた援助として相続分の計算に含めるもの)と主張されることがあります。
まとめ
親にお金を借りるときの不安は、「どう頼むか」「贈与になるか」「どう返すか」の3つに分けると整理できます。金額・使い道・毎月の返済額を決め、借用書を作って印紙を貼り、振込で返して記録を残す。これだけで税務上も親子関係の上も、堂々と借りられます。
まずは手取りと固定費から「毎月いくら返せるか」を計算し、親に頼む金額を足りない分だけに絞ってください。その数字が出れば、親に話すか、社内貸付や公的貸付で足りるかが見えてきます。


